ビリア

16世紀、メキシコを植民地支配したスペイン。

 

 

スペインのコンキスタドールたちは、食事の際に飲む酒を

現地調達しようとして、メキシコに生育していたアガベ

原料にテキーラを創り出す。

 

その同時代、奇しくもテキーラ生誕の地・ハリスコ州にて、

同じくスペインの植民地施策が作用し、ある料理が誕生する。

その料理の名は、ビリア──

 

 

食糧資源確保のため、様々な家畜をメキシコに

持ち込んだスペインの征服者たち。

 

豚、牛、鶏などの肉は先住民にも好まれたが、山羊肉は

クセの強さゆえ味覚的に受け入れられず、食べない=頭数が

減らないことに加え繁殖力の高さもあって、激増。

山羊は、メキシコで作物を食い荒らす害獣と化した。

 

 

それが、飢饉に見舞われた折に一転する。

長時間煮込んで肉質を柔らかくしたり、クセを香辛料で抑えたり

等の調理工夫を施すことで、食肉として山羊を活用するように。 

そうした中で誕生した料理が、ビリアである。

 

 

 

トウガラシの土着品種が味の決め手となる料理、ビリア。

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旨味の強い唐辛子、プルーンのような味の唐辛子、燻製唐辛子。 

三種類を用いる重層的な使い方、トリプルチリ。  

 

 

食材としての独自性が強く、これらを用いずにビリアを作ることは至難。

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オイルで炒めて唐辛子の香りを立たせてから、ペーストに。 

辛味が穏やかで深みのある、重厚な味わい。 これだけでも美味 ♪

 

 

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牛バラと牛すじに揉みこみ、一晩ほど漬け込みます。

 

 

香辛料は、クミン、クローブ、シナモン。 それから

ハーブ(マジョラム、タイム、オレガノ)同系統のトリプル使い。

 

クミンとこれらハーブの組み合わせは、

アフリカ料理やカリブ海料理にも存在する大航海時代の影、

クレオール料理。

 

 

玉葱、ニンニク、トマト、ビネガー等を入れ、グツグツ。

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はい完成!  

 

 

「ビリア・デ・レス」と呼ばれている牛肉版のビリア。

 

16世紀にポルトガルの植民地であったマンガロールで誕生した料理

ポークバファットと、味と調理法の点で奇妙な符合を見せます。

 

双方のルーツを辿ったり、味の差異に産地の独自性を感じたり...

料理の魅力って、美味しい不味いだけではない! て伝えたい。届け。