ロングアイランドアイスティーの紅茶たらしめる要素は何?

紅茶を使ってないのに紅茶の味がするカクテルがあります。
その名前は、ロングアイランドアイスドティー。 


このカクテル、難点がありまして、飲めば飲むほど紅茶の味には
感じなくなります。(テイスティング能力が磨かれることで、各々の
材料の味を個別に知覚できるようになり、紅茶とは思えなくなります)



それでも紅茶味を求めるお客さんのために、バーテンダー
紅茶リキュールを1ティースプーン入れる、キュラソーの代わりに
ベルガモットアールグレイの香りづけに使われる柑橘)の
リキュールを用いる等の裏技を用いたりすることもあります。 



自家製コーラリキュールを作成したのを契機に、いま一度
ロングアイランドアイスドティーを見直してみることにします。



ロングアイランドアイスティーの材料は、ジン、ウォッカ、ラム、
テキーラ、ホワイトキュラソー、レモンジュース、コーラ。 
コーラの原料は、人によって多少レシピが異なりますが、大枠
カラメル、シナモン、バニラ、クローブ、レモン。 


上記の材料の中で、紅茶っぽく感じさせる組み合わせは何なのか、
カクテルを引き算し、コーラの原料レベルから、ミニマムで
組み合わせ、紅茶の要素の成立条件を探してみました。



その結果...


ズバリ、紅茶味にするには、たった3種類の材料で充分だと判明!



■ 自家製カラメルシロップ(砂糖を黒くなるまで焦がしてください)
■ 自家製レモンコーディアル(果皮から充分に香りを抽出してください)
■ ソーダ(水でも可。紅茶の再現でいえば、むしろ水の方が良いです)



この3種類で、紅茶っぽいニュアンスが出ます!
苦味と渋味は混同しやすい味覚という性質を生かし、紅茶の渋味と
錯覚させるため、しっかり焦がしたカラメルの苦味とコクを利用します。



カラメル: メイラード反応で生成された苦味
紅茶: カテキン(渋味)+酸化酵素により生成されたテアフラビン(苦味)


紅茶のポリフェノール ≒ カラメルのメイラードフレーバー



カラメルのフレーバーと苦味を、水で伸ばし、そこにレモンの香りを
のせることで、紅茶らしさを出す。 その紅茶らしさも、有り体に言うと
高級で品質の良い紅茶ではなく、茶葉の風味が乏しい安価なレモンティー
あるいは、レモンスライスを浮かべた二番煎じで淹れた薄い紅茶です。
上質なストレートティーの味を作れと言われても、無理筋というもの。



以前に作ったホップのカクテルが、不思議と紅茶のような味がしたのは
いま思えば、ブランデーとホップが前述のカラメルの役目を果たし、
実生柑の柑橘香と合わさったことで、紅茶と錯誤したわけですね。  



ブランデーでも組み合わせ次第では紅茶らしい風味を作れてしまうので、
ジン、ウォッカ、ラム、テキーラの4種類が必須とゆうわけではありません。
そもそも、カラメル+レモン+ソーダで十分なので入れる必要なし。

もしアルコールを入れる前提ならば、入れた液量分、カラメル+レモン+
ソーダの要素が薄まってしまうので、味のボリュームを維持するために
4種類のスピリッツを使用したのだと邪推します。 

インドカレーで使うスパイスは、使う種類を増やせば増やすほど、
中庸な(凡庸な)風味になるという話が脳裏に浮かびます。



少し脱線しますが、インドのチャイは、高級茶葉ではなく安価なアッサムを
大量に入れて濃く煮出さないとそれらしい味にならないという話、つまり
必ずしも高級な素材がベストなのではなく、低級な素材でしか出せない味覚も
あるという話なのですが、ロングアイランドアイスティーの紅茶らしさを
考察していた際に、随分と役に立った視点でした。