なぜブルーチーズの中にはいくつもの空洞があるのか?
ブルーチーズの青カビ箇所って、空洞になっていますよね?
青かびが繁殖することで、チーズが溶けて穴があくから?
残念ながら、不正解。
下の写真は、書籍「チーズ図鑑」の中のロックフォールチーズの
熟成変化を記録した写真ですが、青カビが繁殖する前の熟成
10日目の時点で、既にチーズの中に空洞がある事が確認できます。
つまり、ブルーチーズの穴は青カビの作用ではありません。
では、何によって空洞が生まれるのか?
ロックフォールの製法を鑑みると、一層その謎は深まります。
ロックフォールのグリーンチーズ(熟成前の状態のチーズ)作りの
工程では、まず、レンネットでミルクの蛋白質を凝固させて、
カード粒を作り、それを型に入れ、4,5回反転させ、カードの水分
を自然排出し、グリーンチーズへと仕上げます。
この作り方では柔らかいグリーンチーズになるため、AOCで指定
されているロックフォールの厚さ8,5〜10,5cmにもなれば、カード
粒同士の接着や自重により、確実に空洞は潰れてしまいます。
一体、なぜブルーチーズの中に空洞が存在するのか?
日本で出版されているチーズ関連書籍では一斉記されていない
テクニックを用いて、意図的に空洞を設けるようです。
それを知ることが出来たのは、北海道の江丹別にあるブルーチーズ
専門のチーズ工房「伊勢ファーム」さんの動画のおかげ。
必見です。
ご覧になりました? はい、ブルーチーズ内部に穴があるのは、
コワファージュというテクニックに拠るものです!
コワファージュの作業によって、カード粒の表面に膜ができ、
その膜がカード粒同士の接着を防いでくれるため、チーズ内部に
粒と粒との隙間が生まれます。
では、そもそも論。
なぜ、ブルーチーズの中に空洞が必要なのか?
それは、青カビは好気性細菌であり、空気が無いと繁殖しないからです。
そのためブルーチーズ作りでは、外から針穴を通したり、空洞を
設けることで、青カビを空気と接触させます。
青カビは空気と接する箇所に繁殖する、そうすると
この写真は、本来こうではなく...
このように外皮が青かびに覆われている状態が、正常なはず。
最も空気に触れるのは、チーズ内部ではなく外皮ですから。
熟成1ヵ月目の外皮に青かびがないのは、撮影用にわざわざ
カビを削り落として見栄えを良くしたのはないでしょうか...
この動画の3:00〜3:05に、外皮が青かびで覆われている
ロックフォールの姿が確認できます。
イギリスの青かびチーズのスティルトンの動画も
併せてどうぞ。 3:00〜3:30
自家製ブルーチーズを作成した外国の動画もご覧ください。
外皮がカビで覆われたブルーチーズの様子は、後半に。
こちらも海外の自家製マニアさんの動画。 こちらも後半に。
どちらの自家製マニアさんも、チーズ内部に空洞を作れていない
ことに注目してください。 ブルーチーズの手作りにおいては
コワファージュがかなり難しいということ! さて、僕はどうする?
次回、コワファージュを別解するの巻、です。