Black Beans Matter
アメリカで巻き起こっている人種差別撲滅運動、Black lives matter。
歴史観が見直しされ、先住民を虐殺し植民地化したコロンブスの像が
各地で破壊されてます。 今回、それに関連した料理の話をしよう。
15世紀~17世紀の大航海時代(この言葉、欧米目線ですね)、
ヨーロッパ列強がアフリカ大陸の開拓/侵犯を始めたことにより、
現地の米料理・ジョロフライスと出会う。
昨年、提供したジョロフライス。 注文してくれた方、ありがとう。
ジョロフライスは、クミン・オレガノ・ローリエ・香味野菜、そして
トマトで赤く染まった米料理。 西アフリカ諸国で食されています。
このジョロフライスが、大航海時代、西アフリカから
カリブ諸島へ渡り、別の米料理へと変化します──
キューバへ渡り、アロス・コングリという米料理に。
コスタリカへ渡り、ガジョ・ピントという米料理に。
全然違う、これら料理の見た目。
トマトで赤く染まったジョロフライス。
黒豆とその煮汁で染まったカリブ海の米料理。
決して、トマトがカリブ諸島に無かったわけではない。
トマトではなく豆で作らざるを得ない理由が、彼らにはあった。
カリブ海でジョロフライスを作ろうとしたのは、開拓民ではなく
奴隷として西アフリカから連れてこられた黒人たち。
プランテーションで奴隷労働を強制させられた彼らが口にできたのは、
質素な食事。 米や芋、豆など、大量栽培される安価な炭水化物系。
奴隷船での食事に比べたらまだマシで、奴隷船では材料は同じく
穀物系だけども、ドロドロのおかゆ状で腐敗しかけ/していたりと、
家畜のエサと形容されるほどに劣悪なものだったようです...
トマトで米を染められないから、黒豆の煮汁で染めた...
こうした歴史の背景があることも、料理の「魅力」だし、まさに
これ「食文化」。 美味い不味いだけの視点では、もったいない。
で、問います。
アロスコングリ、ちと味の濃い赤飯のようなクセのない味なのですが、
もし自分が食べたと仮定したら、どんな印象を持ったと思いますか?
食べやすくて期待した味と違う、ガッカリ...
とか思ったりしませんか? 正直、僕は思いました。
とかく、エスニック料理を口にする方は、僕も含め、
クセのある味を料理に求めてしまうきらいがあります。
でも、そんなの、その国の人たちからすれば、
「自分達の料理に、勝手に期待して勝手に失望するな!」です。
あるがままに、その国のその民族(の料理)を受け入れる...
そんな姿勢でありたい。 Black Beans Matter.
人種差別問題が熱を帯びる今だからこそ、自戒も込めて...
補足。
15世紀~17世紀のカリブ諸島に、果たしてトマトが存在したのか問題。
トマトの原産は、南米アンデス。
16世紀、スペイン人のコンキスタドール(征服者)のエルナン・
コンテスが、メキシコからトマトの種をヨーロッパへ持ち帰った史実。
南米からメキシコへと伝播していたのなら、中間地のカリブ諸島へも
トマトがもたらされていたはず。
それから、もうひとつ。
約18世紀まで、トマトはヨーロッパ人にとって観賞用。
貴族が用いた錫食器にトマトの酸味が反応し、鉛中毒になる者が
続出したため、トマトは有毒な野菜だと勘違いされていた。
これらのことから、カリブ諸国にトマトが存在したのか問題は、
いう場所には存在しなかった、が答えだと推考します。
入植者が、鑑賞用としてトマトを庭に植える可能性は、トマトを
有毒な野菜だと見做している以上、奴隷(金で買った労働者)が
自死に用いるリスク(経済的損失)を避けるため、まず無いでしょう。