2017年クラフトビール雑感
2017年、日本のクラフトビールシーンを振り返れば、まさに
ニューイングランドIPA一色でした。待望していた輸入が本年から
始まり、国内外の多数のブルワーが堰を切ったかのように醸造。
人気銘柄には注文が殺到し、購入できなかったことも... 涙
■ Sierra Nevada & Tree House / East Meets West IPA
ただ、皆さんのNE-IPAの熱が必ずしも高かったと言えないのが事実。
クラフトビールが人気とはいえ、手頃な価格の銘柄で満足する方が
大多数で、コアな層に発展する方は極めて少なかったと言えます。
NE-IPA御三家の一角”ツリーハウス”の銘柄を含むボックスセットが、
コアな層が集う東京の目O方面の酒屋クラスでも売れ行きが悪く、
単品にバラして販売するなど、耳を疑うブームの現状...
更に、NE-IPAの味そのものが人気かと言えば必ずしもそうではなく、
IPAファンにはホップの苦味やパンチが足りないとの不満を持たれ、
ピルスナーしか受け付けない超ライト層には、味がジュースみたいで
ビールじゃねえ!とウケが悪い、意外と販売対象の狭いビールでした。
ただ、言わせてもらえば、ジュースみたいだの、飲みやすいだの、
そういった評価は、NE-IPAの本質を見誤っています。
■ Revival Brewing / Extra Thirsty
イーストを介して生まれる独特のホップフレーバー、そして複数の
穀物を使用することで生まれる味わいと舌触りこそが、NE-IPAの
本質であり、ビールとしての固有性であり、面白さです。
日本初登場! 度数10%越えのNE-IPAのエキストラサースティ。
ドリンカビリティの観点からは、度数が高くハードな部類になりますが
それが故に、NE-IPAを再認識するに最適な銘柄といえます。
それから、2018年──
来年、ブレイクを期待しているクラフトビールについて。
キーワードは、「クロスオーバー」です。
■ To Øl & Põhjala / Imperial Ginie
数年前より海外の醸造所が造り始められていた、ジンもしくは
ジントニックにインスパイアされたビールたち。
方向性としては、ジントニックの再現を目指すか、クラフトジンの
ボタニカル等から着想を得てビールに反映させるか、の2パターン。
■ Voirson / Cuvee Speciale Purple Label
フランスのラ・ブラッスリー・デ・ヴォワロンが造る個性的なビール。
白ワインの澱と共にブルゴーニュ樽で半年間熟成させています。
ブドウの絞り粕を用いたビールならこれまでに存在したのですが、
ワインの澱とは珍しいな、とゆうか何の効果を求めてオリを使うの?
しばらく考えて、あ、もしかしてこれはワインのシュールリー製法を
ビール醸造の世界に持ち込んだのか、、と解釈しました。
■ Voirson / Cuvee Speciale Brown Label
同醸造所のこれまた個性的なビールで、18世紀のヴェルモットを
参考に数種類のハーブを用い、ブルゴーニュ樽で半年熟成ビール。
これら三種類とも、ビール以外の酒に触発され造られたビールです。
それぞれ、ジン、ワイン、ベルモットの世界をクロスオーバー。
新しい地平を開くこうした試みに興味があるし、期待もしています。
販売価格が高くなりがちであるとか、お酒の予備知識が必要であるとか、
クロスオーバーのビールには様々な販売上のネックが存在しますが、
どちらかというとビール専門店より、幅広くお酒を撮り揃うBARの方が
向いているビール、取り扱うべきビールだと思われます。
明くる年も、このようなお酒を皆様に紹介できることを願いまして
こんな感じで恐縮ですが、年末のご挨拶とさせていただきます。
皆さまに佳いお酒との出会いを.. また新年にお会いしましょう!