15世紀のオランダビール復刻 #2

14世紀のオランダで飲まれていた伝統的ビールを復興させた
ヨーペン醸造所のビール。 写真中央の二本がそう。



ひとつは、14世紀のオランダで作られていたコイト(ケイト)。
Koyt、或いは、Kuyt、Kuitとも表記されます。


コイトの特長は、大麦麦芽に加えて、オーツ麦や小麦の麦芽の使用。
Witte Klavervier醸造所のHPによると、オート麦が3、大麦が2、
小麦が1の割合が、ケイトの一般的なレシピのようです。
オートミールスタウトに比べても、オーツ麦の使用量があまりに
多量なことに驚かされます!


2015年に、ブルワーズ・アソシエーションが新しく更新したビアスタイル
ガイドに登場し、なんだよ、Dutch-Style Kuit, Kuyt or Koyt ってのは? と、
どよどよしたのも、記憶に新しいです 苦笑



さて、そのガイドラインによると、コイトは、1400年から1550年にかけて
人気があったビールで、オート麦麦芽45%、小麦麦芽20%、大麦麦芽35%が
使用され、色調は黄金色から銅色。  風味の中心は、穀物由来のフレーバー。
ホップフレーバーは、とても微弱なレベル。 ビールのボディは、ローからミディアム。
チルヘイズ(低温状態によるビールの濁り)などの混濁は許される。
アルコール度数は、およそ4%前後から7%前後の間に。 IBUは25から35。
スイートコーンのような香りのDMSや酸味の存在は好ましくないが、
エステル香(華やかな香り)は弱レベル、ダイアセチル香(バタースカッチの
ような香り)は非常に弱いレベルならば許される。 



....だそうです。
翻訳に自信がないから、だそうです、なのです 苦笑
これもそれも説明不足のインポーターが悪い。 え? 八つ当たり?

写真のヨーペン醸造所のコイトは、オランダのハールレム市立文書館に
保存されていた1407年のレシピに基づいて造られたもので、
その風味付けにはホップではなくグルート(ハーブ・スパイス)を使用。
また、色調もブラウンです。  


つまり、前述のガイドラインが示す黄金色〜銅色と齟齬が生じるのですが、
こちらの方が正当なコイト。 ペールエールピルスナーもまだ生まれていない
15世紀のビールの色が、黄金色である可能性は極めて低いからです。


そういえば、以前Hさんが貸してくれた「びあらば」に、コイトの説明が
あったような気が... もし書いてあれば、もう一度読ませて下さい。 スミマセン



そして、もう一つの復刻ビール、ホッペンビア。 
ホッペンビアが誕生した時代は、ビールの風味付けがグルートから
ホップに移行する過渡期にあります。 当時としてはホップが効いたビール、
それがこのホッペンビアです。 


コイト同様に、ホッペンビアもオート麦、小麦、大麦を使用。
オート麦が多量に用いられた背景には、食糧難対策として、パン等の製造に
用いられる穀物類を、ビール造りに使用することが禁じられたことにあります。
今では美談として語られがちなドイツのビール純粋令は、実はこのような
事情を包含します。  



グルートで風味付けたのがコイト、ホップで風味付けたのがホッペンビア。
ある意味、対をなす両者。 ビールの過渡期を感じる良い二本だと思います。
それでは、皆々様のご注文をお待ちしております。


あ、因みに、ここ10年の間に登場したエクストリームなIPAのホップ感を
ホッペンビアに期待するのは、無論、お門違いなのでご注意を。